代表詩 『樹つ 』
非望と希望の
抵抗の葉をふるわせながら
樹て
大いなる木よ
地のうえを 虚言がとおりすぎる
埋葬せよ いつわりの言葉を
木洩れ日映す太き幹の鼓をうちならせ
非力な枝葉をうちならせ
風をよびこめ
きみの咆哮を空へ
帆をはれ
きみが磨いてきた真実を 海へはなつ
羅針盤はきみとともにある
非望と希望の針はふるえながら
一点を射しつづけている
地の底には 言葉の根
みみずたちがにごりのない水をすっている
さなぎたちはしずかに時をかかえ 誕生にそなえている
空の底には 涙の貯水池
青い波を揺らす風の袋には哀しみ
来る日も来る日も敗北を意識しながら
闘いつづけねばならないのだ
きみの生きている時代も
そうさ 木は立ちつづける
生まれながらのしなやかさで 折れもしない
水を汲みあげては 空へ弧線をはなつ
うちならせ葉を 枝を
とどろかせ咆哮を 沈黙と 希いを
航路の終へ
風のふいごはうなる
空は鮮血を流している
樹て
大いなる木よ
この地に立ちつづけ
抵抗のうたへ
みづからの弦を ふるわせつづけるのだ